歯科矯正用アンカースクリューとは
歯科矯正用アンカースクリューを用いた矯正治療は、ピアス程度の小さなネジのようなものを顎の骨に埋め込み、それを固定源として歯を移動していく治療法です。従来の治療法では、不可能とされていた歯の移動が可能になります。しかし、歯茎にネジが刺さっている見た目から「痛そう」「怖い」と感じてしまう方も少なくありませんが、実際は多くの患者様が最初に抱いていた印象と比べて痛みが少なかったと感じています。
従来の歯の動かし方
例えば、前歯が出ている症状では、前歯を引っ込めるスペースを確保するために、抜歯が必要となる場合があります。前から4番目の歯を抜いた場合で説明します。
この状況では、前歯3本(両側6本)を一塊りとして後ろに動かしたいところですが、その場合「奥歯3本vs前歯3本」の綱引き状態となり、力のバランスから、前歯を後ろに動かす作用に対して、奥歯が前に動く反作用も相応に大きく働いてしまいます。それを防ぐため、まずは奥歯から3番目の歯だけを引っ張って、その後に残りの前歯2本(両側4本)をまとめて動かすという「2段階の移動」を行います。(しかし、それでも反作用は生じて奥歯は前に動いてしまいます)
歯科矯正用アンカースクリューを併用すると
一方で、歯科矯正用アンカースクリューを用いると、奥歯と違ってアンカースクリューは強固に固定されているので、一度に前歯3本をまとめて引っ張って移動することができます。結果として治療工程を従来法と比べて簡略化することが可能となり、治療期間が短縮されます。(治療期間が短くなることで、虫歯の発生リスクも減少します)
*骨の状態によっては2段階の移動が必要となることがあります。その場合もしっかりと奥歯を固定できるので治療がスムーズに進み、治療期間の短縮が見込めます。
また前歯をしっかりと下げたい場合は奥歯を全く動かすことなく矯正治療を行うことができます。
《アンカースクリューの植立の流れ》
レントゲン撮影
レントゲン撮影で、アンカースクリューを埋め込む場所や方向を決めます。
口腔内の清掃・消毒
歯垢を染めだして細部まで手作業で徹底的に磨いた後、消毒薬で消毒します。
必要に応じてガイドのフィッティング
あらかじめ制作しておいた植立部位と方向を示すガイドがあれば、実際の歯に合わせてフィットを確認します。
麻酔
注射針の痛みを抑える表面麻酔剤の塗布後、通常より細い針で電動注射器を使って、ゆっくり麻酔液を入れるのでほとんど痛みがありません。
植立
ドライバーの先にアンカースクリューをセットし、ガイドに沿って、ゆっくり回転させて植立していきます。ほとんどの場合痛みは無く、骨を押されている感じがします。
痛み止めと注意事項の説明
必要に応じて痛み止めと抗生物質をお出しします。痛み止めは痛くなければ飲む必要はありませんが、抗生物質は必ず飲むようにしましょう。
✳︎15分くらいで終わります。
《特徴》
患者様にとっての負担軽減
他の装置と比べると、とてもコンパクトなので、見た目や違和感が軽減されます。痛みも少なく、金属アレルギーの心配もない安全な素材です。動かしたい歯に24時間アプローチし続けられるので、従来の矯正治療よりも期間を短くすることが可能です。
困難な矯正治療も行えるようになった
従来の矯正治療方法での大臼歯の圧下や後方への移動は、かなり困難であるとされてきました。ですが、歯科矯正用アンカースクリューを用いた装置であれば、困難な歯の移動も行える可能性があります。
ヘッドギア(顎外固定装置)などの使用が不要になる
今までは、前歯を後方に移動させたり、奥歯が前に来ないように押さえておく目的で、ヘッドギアが多く使用されてきました。歯科矯正用アンカースクリューを用いることで、ヘッドギアの代わりに24時間歯を固定し、効率よく歯を動かすことが可能です。
歯を大きく動かすことができる
一般的に行われるブラケット矯正ではワイヤーの反発力で歯を移動させますが、インプラント矯正治療ではアンカースクリューを固定源にして治療対象の歯を引っ張ります。アンカースクリューは歯茎に埋め込んでいるため安定して強固です。そのため強いテンションをかけて歯の移動量を大きくできます。重度の出っ歯のように前歯を大きく後方に移動させるような治療で効果を発揮します。
小臼歯抜歯治療を回避することができる
矯正用アンカースクリューを使用して全ての歯を後ろに移動させることで、小臼歯抜歯をせずとも矯正治療が可能になることがあります。
治療例
治療前
治療後
このケースガタガタの程度が大きく従来であれば小臼歯抜歯を行うケースでした。今回矯正用アンカースクリューとPLAS(パラタルレバーアームシステム)という装置を用いて矯正治療を行うことで奥歯の大きな移動を達成することができました。
*全てのケースで抜歯が不要になるわけでわありません。気になる方はご相談ください。
矯正用アンカースクリューのメンテナンス
とても有益な矯正用アンカースクリューにも注意点があります。気になってむやみやたらと手や舌で触ったり、お口の中が不潔なままだと、せっかく入れたアンカースクリュー周囲の歯茎が感染を起こし、グラグラしたり、外れることがあります。タフトブラシなどを使ってスクリュー周囲を清潔に保っていただくことが大切です。歯磨き粉ではなく、うがい薬を少量つけて磨くとより清潔になります。 アンカースクリューの一般的な成功率は7~8割程度といわれ、10人に2~3人はアンカースクリューが安定せずに抜けてしまうことがあります。若年者や喫煙者の方、お口の中に汚れが多い人はアンカースクリューが成功率がより低くなります。
最後に
北九州市小倉北の歯医者ヤマヂ歯科矯正歯科クリニックでは、日本矯正歯科学会の認定医と臨床指導医が在籍し難しい矯正治療の患者さんでも多くの治療を行ってきた実績があります。無料相談をお受けしておりますので気になる方は24時間ネット予約にてご予約を取られてください。
山地晃二郎
ヤマヂ歯科・矯正歯科クリニック 院長
住所 福岡県北九州市小倉北区中井5-4-26
日本矯正歯科学会 認定医
日本口腔インプラント学会
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